即効性のある「ホルモン補充法(HRT)」|プレ更年期の治療

即効性のある「ホルモン補充法(HRT)」|プレ更年期の治療

更年期障害の治療として、ホルモン補充法(HRT)は世界的に行われています。しかし、日本での普及率はまだまだに低く、欧米で30~40%に対し、日本ではわずか2%ほどしかありません。

日本での普及率が低い最大の理由は「HRTは乳がんになりやすい」との噂があるからです。

そこで、副作用のことも含めて「ホルモン補充療法(HRT)」について調べてみました。

ホルモン補充療法(HRT)とは

ホルモン補充療法(HRT)とは、年齢による急激なホルモン減少を緩和するために、少しだけ女性ホルモンを補充していく治療法です。

本来は、閉経後の女性が選択すべき治療法なのですが、プレ更年期であっても、医師が必要と判断したときは、閉経前でも行うことができます。

ホルモン補充(HRT)の種類

ホルモンを補充する方法には、飲み薬、貼り薬(パッチ剤)、ジェル剤があります。
年齢、健康状態、エストロゲンの単体投与、黄体ホルモンの併用投与、投与量、投与期間などでも方法が違ってきます。

ホルモン補充(HRT)投与方法

HRTの投与方法には「周期的投与法」と「連続的投与法」の主に2つのパターンがあります。一般的なHRT処方は「周期的投与法(エストロゲン・黄体ホルモン周期的投与法)」です。

エストロゲンと黄体ホルモンを、生理周期のような日程で投与することで、自然に近いホルモン補充を行います。

エストロゲンを21日間投与し、後半の10日間は、黄体ホルモンを併用し、その後5~7日間は休薬期間を設けるのが「周期的投与法」です。(日数は若干前後します) 

閉経してからかなり年数が経った人、子宮を摘出している人、休薬すると激しく悪化がみられる人には、休薬期間がない「連続的投与法」で行われることが多いです。

保険適応

ホルモン補充療法(HRT)は「更年期症状の治療」「骨粗そう症の治療」「萎縮性膣炎治療」の場合、保険が適応されます。

しかし、美肌やアンチエイング、骨粗そう症の「予防」などの場合は、保険適応になりません。

薬の種類にもよりますが、保険適応で1ヶ月のお薬代は3,000円程度といわれています。自由診療の病院の場合で3~5万円です。

副作用のところでも説明しますが、初期のHRTの治療では、副作用に「子宮体がん」「乳がん」のリスクがありました。そこで、HRTを開始する前や治療中の定期検診で、子宮体がん・子宮頸がん・乳がん検診が必ず行われます。

その他、血液検査・血圧・体重測定などの検査も行いますので、HRTを受けるためには、保険適応であっても、初診は5,000円~1万円前後かかる場合があります。

自由診療の病院ではそれ以上の金額になりますので、費用が気になる人は、事前に確認しておきましょう。

ホルモン補充療法(HRT)の効果について

ホルモン補充療法(HRT)の効果について

更年期障害は、不快な症状が起こるだけでなく、女性の生活の質(QOL)を低下させます。

例えば、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)が頻繁に起こると、人に会うことが苦痛になり、外出を控えて家にひきこもりがちになります。つまり、更年期障害によって、生活意欲が下がり、社交性にまで影響が出るのです。

HRTは、症状の改善だけでなく、女性の生活の質(QOL)の向上にも高い効果をあげています。また、認知症などの予防医療を目的に治療されるようにもなりました。

それでは、具体的なHRTの効果を見てみましょう。

主なホルモン補充療法(HRT)の効果

●女性ホルモンの低下による自律神経失調症の緩和

血管運動神経症状の改善
ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)、動悸、息切れ、冷え、頭痛などの改善、

精神神経症状の改善
不眠、イライラ、落ち込み、手足のしびれ、うつ病の予防効果

泌尿系の改善
頻尿、尿もれ、過活動膀胱など

●骨粗そう症の予防改善
骨量増加の促進効果

●コラーゲンやエラスチンの増加促進作用
肌の潤い、ハリ、柔軟性の改善、関節痛や筋肉トラブルの改善

●脂質異常の改善
悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やし、動脈硬化の予防

●認知症・アルツハイマーの予防

このように、身体的、精神的な症状の改善だけでなく、アンチエイジングや認知症の予防など、HRTは幅広い効果が期待できるのです。

ホルモン補充療法(HRT)の副作用

HRTは治療開始の初期に、軽度の副作用が出る場合があります。これは、体がHRTの治療に慣れていないために起こる症状です。

HRT治療開始初期の副作用について

乳房や下腹部のハリや痛み、不正出血、吐き気などが起こりますが、しばらくすると、体が慣れてくるので改善するものがほとんどです。なかなか治まらない場合は、薬の投与頻度や量を調節することで改善できます。

低用量ピル(OC)の副作用としてもご紹介していますが、ホルモン剤は、血を固まりやすくする性質があるので「まれ」に血栓症が起こる場合があります。

ふくらはぎのむくみや腫れ、胸の痛み、頭痛などが起こった場合は、すぐにお薬をやめて医師に相談してください。

HRTの乳がん・子宮がんのリスク

HRTの副作用で心配されているのは「子宮体がん」と「乳がん」です。

●子宮体がんのリスク

HRTは1896年ドイツで初めて実施された、とても歴史ある治療法なのですが、初期のHRTはエストロゲンだけを補充する「単体ホルモン補充療法」でした。その結果、子宮体がんの発症率が上昇した事実があります。

しかし、黄体ホルモンの併用で子宮体がんのリスクが減ることが証明され、現在ではHRTによる子宮体がん発症率の上昇はみられません。

●乳がんのリスク

2002年、米国国立衛生研究所(NIH)が行っていた、HRTの大規模な臨床試験(WHI)の中間結果の臨床論文の発表で、激震が起こりました。

「HRT(エストロゲンと黄体ホルモン)の長期投与は、心血管系疾患や乳がんのリスクが高くなる」と報告され、臨床試験が中止になったのです。

しかし、この臨床試験では、対象女性の70%が肥満、50%が喫煙者、高齢者が多く含まれており、最初から心血管系疾患や乳がんのリスクが高い人が多く含まれていました。

日本女性医学学会でも、臨床試験の対象が日本人女性の平均体型とは違うという理由から「日本の更年期女性には該当しない」と見解を発表しています。

現在では、HRTを再評価すべきデータも発表されています。

実際のところ、5年以上の継続投与で、若干、乳がんの発症率は高くなっていますが、死亡率には変化はないのです。また、3年間の服用では、副作用の報告は全くありません。

日本産婦人科学会・日本女性医学学会が刊行している「ホルモン補充療法ガイドライン」(2012年版)でも「5年以内のHRTでは乳がんのリスクは上昇しない。」「黄体ホルモンを併用すれば子宮体がんのリスクも上昇しない。」という内容が記載されています。

HRTを受けている人は、半年に1度の定期健診(血液、血圧、体重測定など)、年に1度の子宮がん・乳がん検査が行われますから、副作用の早期発見もできるのです。

ですから、HRTは、副作用が全くないとは言えませんが、特にがんについては、噂ほどのリスクはないようです。

ホルモン保寿療法(HRT)を受けられない人

乳がん、子宮体がん、血栓症の経験のある人(治療中を含む)はHRTが受けられません。また、血栓症・心筋梗塞の経験者、心不全・腎不全経験者、原因不明の不正出血、妊娠の疑いのある人も受けることができません。

これらの症状がなくとも、60歳以上の新規投与や、子宮筋腫・内膜症・腺筋症の経験者、糖尿病、高血圧、喫煙者は「HRTを避けたほうが良い人」とされています。

医師とよく相談して、HRT以外の治療法を選びましょう。

ホルモン補充療法(HRT)とピルの違い

ホルモン補充療法(HRT)とピルの違い

プレ更年期の治療の選択肢として、HRTの他にも「低用量ピル(OC)療法」を、別のページで紹介しています。どちらも、女性ホルモンを服用する治療法ですので、治療の選択の参考にしていただくために「HRTとピルの違い」について説明します。

低用量ピル(OC)は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)を含んでいますので、HRTのようにホルモン補充を目的として服用することができます。

ならば、ピルとHRTとでは、何が違うのでしょうか?

ピルとHRTとの大きな違いは、含まれているホルモン量(ホルモンの強さ)です。
低用量ピルに含まれているエストロゲン剤の強さは、HRTの4倍もあります。超低用量ピルでも2.5倍です。

つまり、卵巣機能の低下、もしくは閉経を迎えた女性の体には、ピルではホルモン量が多すぎます。ホルモン(エストロゲン)のはたらきが強くなると、乳がんや血栓症のリスクが高くなるのです。

若い時からピルを飲み続けている人は、現在の卵巣機能のはたらきを考慮し、医師と相談しながら、閉経前にピルからHRTに切り替える必要があります。

一般的には、ピルは40歳~45歳に選択し、45歳以上になったらHRTを選択したほうがよいと言われています。

ホルモン補充療法(HRT)は、まだまだ日本では普及率が低い治療法ですが、即効性が期待できる有効な治療法なのです。

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